世界マンガゼミナール

グラフィックノベル読解

世界マンガゼミナール開講!

 ここ数年、海外マンガの翻訳が増えています。2012年に出版された海外マンガの刊行点数は約70点、2013年は約90点、2014年はついに100点を超えました。おそらく日本での海外マンガ翻訳史上一番刊行点数が多いのがここ数年でしょう。

※年度別の刊行点数は、邦訳海外マンガの年間ベストを読者投票で決めるガイマン賞の発表を元に見当をつけました。ガイマン賞は2012年から2014年まで、毎年、前年の10月1日から当年の9月末日をノミネート対象期間としており、その年1年の海外マンガ邦訳点数は公表していません。

  ただ、海外マンガの刊行点数が増えることで、個々の作品が埋もれてしまっている印象があります。ただでさえ巷に本があふれる昨今。日本のマンガだけでも年間刊行点数はゆうに1万点超え。よっぽどのことがなければ、書店でスペースを確保するのも、読者の記憶に残るのも難しいという状況になっています。

  一口に海外マンガと言っても、アメリカン・コミックスに、フランスのバンド・デシネ、イタリアのフメッティ、スペインのテベオ、韓国のマンファなど、さまざまな国の、さまざまな形式のマンガがあります。日本のマンガに近いものもあれば、似ても似つかないものも。おそらくその形式の違いと値段の高さが、日本人読者にとって最初の障害でしょう。

  文化の違いを乗り越え、多大な手間と面倒をかけて翻訳されているという時点で、海外マンガは何らかの意味で既に優れた作品であるはず。実際、その中には、かつて存在した世界中のマンガの中でも珠玉と言うべき作品があるんです! そんな名作が日本の読者に知られることなく、ひっそりと埋もれていってしまうのはあまりに悲しすぎる!

  海外の作品でも、映画や小説や音楽だったら、私たちはそれなりに知っています。下手をすれば、それらのどのジャンルについても、海外の傑作のほうが思い浮かべやすかったりするのではないでしょうか? ところが、ことマンガについては、私たちは内向きになりがちです。洋画を見、海外文学を読み、ワールドミュージックを聴くように、海外マンガを楽しむことはできないものか? マンガも、映画や小説や音楽と同じように、全世界的なパースペクティブの中に置いてみて、初めてその真価がわかるはず! その先には日本のマンガも含めた世界マンガの眺望が開けています。

  海外マンガの翻訳が増えるにつれ、海外マンガの情報はかなり増えてきました。海外マンガの魅力を語る読者の言葉もネット上に散見されますが、ただ、こちらはまだ決して多いとは言えません。未邦訳の作品を語るのはハードルが高いかもしれませんが、少なからぬ作品が翻訳されているんです。もっと海外マンガについて語ろうじゃありませんか!

  黙って待ってたところでどうなるわけでもなし。ということで、“世界マンガゼミナール”というものをネット上で始めてみることにしました。ゼミ参加者は今のところバンド・デシネ翻訳者の原正人とマンガ研究者の三輪健太朗の2人。2人ともまだ世界マンガについて多くは知りませんが、少しずつ勉強していきたいと考えています。まずはあんまり構えずに、これはという海外マンガを取り上げ、僕らなりの言葉でその魅力を語っていきます。いずれはどこかリアルな場でもゼミを行うことができるようになったら楽しそうですね。入退場自由。途中参加大歓迎。さあ、あなたもぜひご参加ください!

(原 正人)